火天は梵名をアグニといい、古代インド神話ではインドラ、ソーマとともにヴェーダ三神に数えられ、重要な位置を占める神として信仰され、宇宙の偉大な力の一つである「火」を神格化した尊です。
この火天に対する信仰は、日常生活に欠かすことの出来ない火や、天地を照らし、物事を識別させる力をもっている火や光線に対する感謝から生じたと考えられています。また護摩供養法などがうみだされたのも、火中に投じた供物を火天が神のもとへ運んでくれるとし、火天を天上の神々と地上の人間を結ぶ使者と考えていたからだと思われます。
火天崇拝は、もともとはヒンドゥー教で信仰されていたもので、功徳を受けることを目的として、天に向かい火を焚くものでした。火天が仏教にとり入れられてからは、煩悩を焼き尽くす神となり、さらに護法神(ごほうしん)として八方天や十二天の一尊に加えられ、東南方を守護することになります。
左:十二天の内の火天像 右:胎蔵曼荼羅中の火天像
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