地天は古代インド神話では、上方を守護する梵天(ぼんてん)に対して、下方の大地を守護する地母(じも)とされ、諸神の母として最高の人格が与えられたと説かれている女神です。古代インドでの信仰が盛んだった地天は、仏教にも早くからとり入れられ、大地及び大地の持っている徳性を神格化した尊として、十二天中の一尊に数えられています。
仏伝(ぶっでん)には、釈尊の修行中に現われた悪魔が釈尊を誘惑したものの退けられ、「悟りを開いたことを証明するものはない」と言うと、釈尊が大地を指して大地に証明を求め、地天が大地より涌き出て七宝の瓶を捧げ証明した、とする説話も残っています。
また、密教における地天は、万物育成の徳を持ち、衆生の心に潜む悟りの心である菩提心を堅固にして育成させる無限の宝を与えるものとして曼荼羅に配されています。
家屋や墓碑などを建てるのに際し、諸神諸霊に供養を捧げ霊を鎮め、永久に障難がないように、地天を本尊としての地鎮法が行なわれるのもそのためです。
左:十二天の内の地天像 右:重文・十巻抄 円通寺 地天像
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