月天は梵語でチャンドラといい、月や光明を意味します。インドのバラモン教では、諸徳を神格化した神とされ、また、よい香りの芳香で人を酔わせるソーマ酒の神としても信仰され、「ソーマ神」の別名があります。月は日没後の夜空で最も輝く存在で、満天の星空を支配することから「星宿王(せいしゅくおう)」とも称されます。この月の清らかな光には、煩悩にさいなまれ苦しむ人々を慰め、恐怖心を取り除く神秘的な力が存在していると古(いにしえ)の人は感じたのでしょうか。
密教においても、その光の不思議な徳に注目して、神格化した月天を八方天、十二天の一尊として曼荼羅に配置されています。
また、月天の姿は複数の鵞鳥(がちょう)とともに表されるものが多いようですが実に多様です。それは、月天の持つ神秘的霊力をいかにして表現するか苦労してきた結果、様々な姿の月天像が伝わってきているのだと思われます。
左:十二天の内の月天像 右:重文・十巻抄 円通寺 月天像
このページは以上です。
Copyright 高野山霊宝館 All Rights Reserved