孔雀明王は、両翼を広げ尾を光背のように展開した孔雀の背に乗る姿の明王です。
不動明王や愛染明王のように怒りをこめたきびしい忿怒相の表情ではなく、慈愛をこめた慈悲相といわれるやさしい顔で、他の明王とは異なった姿で表現されています。
日本ではあまり一般に信仰されてはいませんが、明王の中でも最も早くインドで成立していたのがこの孔雀明王です。日本でも既に奈良時代には祀(まつ)られていたようで、孔雀明王菩薩・摩訶摩由璃菩薩ともいわれ堂に安置されていたようです。
孔雀明王は、孔雀が美しい姿をしながらも人間の最(もっと)も嫌う猛毒をもった蛇を食べ、その害から守ってくれるところから信仰を集めたようで、一切諸毒を除去する能力をもつ功徳から、息災や祈雨などの本尊として祀(まつ)られてきました。
孔雀の背に乗る明王は、倶縁果(ぐえんか)・蓮花・吉祥果(きちじょうか)・孔雀尾をそれぞれ4本の手に持っています。平安・鎌倉時代の優秀な仏画は案外伝えられていますが、彫刻としては古い時代のものは極(ごく)少なく、その中で高野山の伽藍孔雀堂安置(現霊宝館収蔵)の快慶作の孔雀明王像は大変有名な像です。
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