観音菩薩は三十三応現身といって三十三の姿に変化(へんげ)し、信仰者のあらゆる災難を除いて救済されると説かれていることから、三十三種の観音が成立しました。その中でも著名な観音の代表として七観音(聖・十一面・千手・不空羂索(ぶくうけんさく)・准胝・馬頭・如意輪)があります。
千手観音もそのうちの一尊(いっそん)ですが、詳しくは、「千手千眼(せんじゅせんがん)観自在菩薩」といい、千の手の各々の掌に一眼があり頭部に化仏(けぶつ)という仏面(ぶつめん)をたくさんつけていると説かれています。頭部の化仏は普通十一面か二十五面の2種類があるようですが、経典には五百面の化仏を説くものもあり、観音の中でも最も複雑な姿をしています。
千手千眼と称されていますが、実際の仏の姿としては千の手を表現した像は少なく、四十二臂(ひ)の像が一般的です。この四十二臂のうち、正面胸前で合掌する両臂と腹前で定印を結ぶ両臂を真手(しんしゅ)と呼び、この印を結ぶ各両臂を一本と数えて計四十二本の手と称されています。またこの真手の二本の手は衆生救済のため四十の功徳がある働きをするといわれています。真手以外の四十本の手は、各々一本の手で二十五の苦しみや災難を救う功徳があるといわれており、この二十五の功徳数と四十本の手を倍にすると千になり、千手を表現しているといわれ、千手観音の姿として四十二本の手を有する姿が一般的です。
胎蔵曼荼羅の虚空蔵院に威厳ある千手観音の姿を見出すことができます。
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