観音は阿弥陀如来の慈悲の部門を受けもつのに対し、勢至菩薩は智恵の部門を受けもち、阿弥陀如来の脇侍として観音菩薩とともに有名な菩薩です。勢至菩薩は、阿弥陀三尊の一尊(いっそん)として数多くお祀りされていますが、単独の仏としてお祀りされることは非常に少ないようです。
勢至菩薩は、智恵の光をもってあまねく一切を照らし、三途(さんず)(六道中の三悪道(さんあくどう))を離れさせる無上の力をもっているといわれ、また勢至菩薩が足をただ投じただけでも、三千世界や悪魔の宮殿をも震動するほどであるといわれています。
勢至菩薩は、西方極楽浄土の教主である阿弥陀とともに観音や多数の奏楽・供養菩薩などと雲に乗り、極楽浄土から浄土往生を願う臨終の人々を迎えに来るという信仰をもとに描かれる阿弥陀聖衆来迎図(あみだしょうじゅらいごうず)に、合掌し観音とともに聖衆の先頭部にその姿が描かれています。また、大師が中国より請来した両部曼荼羅中の胎蔵曼荼羅、蓮華部院(観音院)にも大勢至菩薩として描かれ、衆生が本来的に持っている仏心を大きく開かせようとする意欲を示している菩薩とされています。
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