皇太子は同妃殿下(ルウイズ妃)と高野山に登山し密教美術の研究に来館され、記念に霊宝館正面左に高野槇(こうやまき)を植樹されました。
左の写真は『高野山時報』大正15年10月15日秋期特別号第422号より複写。スウェーデン皇太子グスタフ・アドルフ・オスカー・フレデリック・ウイリアム殿下による高野槇植樹風景
平成10年9月22日、台風七号により、途中から枝分かれしていた箇所より無惨にも折れてしまいました。
「瑞典皇太子グスタフ・アドルフ・オスカー・フレデリック・ウイリアム殿下、同妃ルウーイズ殿下は10月2日午後2時、長谷川和歌山県知事、山縣式部官、瑞典公使、澤村京大教授等随行せられ御登山、女人堂迄御出迎申上げた庄野執行長、藤村蜜幢師、藤本真光師、秋月聖憲師等の御先導にて高野山大中学校職員学生等に御会釈ありつヽ順路、霊宝館にお成りあり井村主事、澤村専太郎氏等の御説明を聴かれつつ約一時間余りに亘り諸仏来迎図、釈迦涅槃図、弘法大師御筆の経典等を懇ろに御覧あり、天野神社使用の舞楽衣装等を御観覧せられた。同館前庭に高野槇を御手植あり、伽藍に至り金堂、御影堂の御参拝あり、不動堂の内外を仔細に御覧あらせられた。明王院にては赤不動を拝せられ殿下より「非常に貴重なるものだ保存につき最善の努力をせよ」との御言葉があり、密教藝術の偉大なる威力を御感嘆遊ばされた。
午後4時金剛峯寺に成らせられ釈、久保、真淵、和田、関、徳守、宮崎、浦上、堀田、鷲峯栂尾、吉田、辻本諸師御出迎申上げ大玄関にて座主猊下と握手の御礼ありて上段の間に成らせられ各機関代表者列席御歓迎茶話会を開かれ座主猊下よりは左の御挨拶があつた。国賓、瑞典皇太子同妃両殿下が特に吾が高野山に御参拝に成り弘法大師の遺業を御覧なされる事になつたのは老衲初め一宗の光栄とする所であります。茲に茶話会を開き御歓迎申上げる次第であります。瑞典皇太子よりは左の意味の御言葉があつた。
余及び妃の為に斯く盛大なる御歓迎を受くる事は非常に歓喜致してゐる所であります。本日は此の霊山の宝物等を拝観する事を得たのは長く余の記憶に残るもので深く成謝致します。
約30分間種々御物語りありて一同の御見送りを受け御宿所たる清浄心院に成らせられ坎僧正等の御出迎に御会釈ありて設けの御座敷に御くつろぎ遊ばされ庭園の風致を御感賞あり晩餐は全部日本座敷にて高膳にて精進料理の御饗應をおよろこぴになられた。
3日午前9時、前日の如く藤村総監、庄野執行長の御内案にて奥之院に御参拝あり、途中の石碑等を御手づから御撮影あり燈籠堂の内部に御参進一灯を献ぜられた。御廟御参拝後、衆僧の紋日黒衣の姿を配したる奥之院の並木立を自ら活動写真に納められ午前10時女人堂御出発大衆師見送りの裡に御下山になった。 殿下は御案内申上げた庄野、藤村両僧正等に対し左の如き御感想をお述べになった由。
余は前以て高野山の写真帳等を見て居って大体の事は想像して居つたが、今回親しく登山して弘法大師の偉大なる事を知ると共に高野山が世界無比の霊山であることを知った。且つ此の宗旨が時勢の進歩に伴ひ益々発展せられるのは特にうれしく思ふ。尚ほ今後益々人類の為に密教の宣布を希望する次第である、云々。」
『高野山時報』より
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