要 旨
ここで云うところの「現代」とは、昭和(1926〜)から現在までをいい、「奉納品」とは、総本山金剛峯寺乃至は当高野山霊宝館に奉納された品々をいいます。
古来より、寺院仏閣に品々を奉納するという作善行為は、連綿と続いて来ました。その中には、寺院の運営に関わる寺領(寺院の所有する荘園領地)の安堵なども寄進奉納の内に入れる事が出来るかと思います。即ち寺院に伝わる宝物の大半は奉納といっても過言ではありません。事実、御影堂宝庫に収納されていた大多数の品々は奉納品で占められており、現在、国宝に指定されている弘法大師著書の『聾瞽指帰』さえも、多くの人の手を経て最終的には室町時代の天文五年(1536)に、堺の前田仲源五郎から御影堂に奉納されたことが、奥書から判明しています。
また、江戸期の高野山に於いては、徳川家が高野山を菩提所と定めたため、全国の諸大名も競って高野山と寺檀関係を結び、有名なところでは武田信玄などをはじめとする武将の刀剣類や肖像画、先祖伝来の仏菩薩像などが菩提を弔う目的で奉納されました。
現在に至っては、当代の著名画家による作品はその時々に奉納され、書家による写経なども挙げることができます。中でも高僧による曼荼羅図や当代画家による作品など見るべきものがあります。又、家宝として伝来した古仏類なども奉納されております。これらの一端を展観し、現代の奉納品にみる美術を観賞していただこうとするものです。
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