密教法具は古くは奈良時代の雑密の輸入と共に一部が我国にも伝わりましたが、平安時代初期になるますと弘法大師をはじめとする入唐八家によって中国より純密が請来なされ、現在でも密教寺院で見受けられるような密教法具が伝えられました。この密教法具とはインドの生活用具等に祖型を持つもので、例えば身を護るため武器であったり、楽器類であったものです。それらを用いた修法によって煩悩を打ち砕いたり、眠る仏性を呼び起こさせるというように法具自体、それぞれに仏格が備わっており壇の上に曼荼羅世界を展開させるのです。今回はそれら弘法大師より脈々と現代に至るまで受け継がれてきた法具特に大師が修法中に直接手にしたであろうものやその請来品の写しとされる独鈷杵、三鈷杵・五鈷杵等を並ペ、ただ単に工芸品という枠に納めきれない密教法具の持つ雰囲気また法具の摩耗に見られるような密教行法の厳しさを感じ取って頂ければ幸いです。
またこれら金属製法具と共に修法壇や灌頂で用いられる山水屏風、十二天像なども大きな意味で密教の重重な法具類といえます。そしてこれら他宗では見受けられないような独特な密教の法具を用い道場の荘厳を行い、大日如来の浄土である密厳国土を具象化し、そこで多くの人々の為に修法、教化を行います。
今回は平成4年に行いました企画展「密教法具」以降、新たに収蔵また、研究した法具類を展示することにより一層の充実した企画展としたいと思います。
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