趣 旨 女人禁制のおきては破りがたく、麓に母を留めてたゞ一人、山中に父を尋ねる石童丸の哀話を残高野山。悲恋の主人公瀧口入道の庵室に、敗残の身を寄せる平惟盛、樗牛の麗筆によってこの哀切きわまりない物語の展開する高野山。前野山の名はわれわれにはあまりにもなじみが深い。 宗祖弘法大師が、ここ高野山に禅院建立の勅許を蒙つた弘仁七年から、今咋はちようど千百四十年、脈々として法灯を護持して来たのが、真言宗の根本道場金剛峯寺である。しかしながら、このお寺の送り迎えた千年に余る悠久の年月は、決して平穏無事なものではなかった。大師の入減(承和二年835)後、後継者の法門興隆の苦心はさることながら、天暦六年(952)以後たび重なる雷火に堂塔焼失の難に遭い、あるいは鎌倉時代に、吉野との争いに僧徒の離山が起ったり、あるいは自衛のための僧兵を撒すべしとの織田信長の申入れを拒絶してその怒りを買い、ついに信長の攻略軍の矢面に立ち、あるいは根来征伐の余勢を駆った秀吉の襲撃に備えなけれげならないような危機にも直面した。かれは本能寺の変によって、これは根来の陣中に秀吉を訪れた木食上人の嘆願によって、いづれも寺塔の潰滅を免れ得た。が、このことのために上人は秀吉の深い帰依を受け、秀吉が母の菩提所として興山寺を創建するに当たっては、上人をその開山に迎えた。まさに奇縁というべきである。そして文禄三年(1596)には秀吉親しく登山して法令を営んだ。秀吉に始まる武家の帰依は、徳川の治世に及んでも衰えることなく、今日奥ノ院参道におびたゞしく残る各藩諸大名の墓石が、この昔日の盛況を物語っている。 平安初期の仏教界に、叡山の伝教大師とともに双璧ほ成す弘法大師は、本領たる宗教家としてはもとより、遍照発揮性霊集を遺した文学者として、嵯峨天皇、橘逸勢とともに三筆とうたわれる能書家として、綜芸種智院を創めた教育家として、まことに三面六臂の多力者であった。したがって、わが上代の文化史上に残した大師の足跡は、すこぶる大きいといわざるを得ない。大師の生涯は六十三歳を以て終わった。しかしながら、大師によって伝えられた真言密教の、その後のわが文化の成長発展に寄与した力の偉大さに至っては、まさに測りがたいもののあることをも顧みなければならない。すなわち、大師は、高野山を開いて以来の千百余年の間を、生き続けて来たともいえるであろう。 このたび山中伝襲の秘宝の数々が公開される機会が到来した。われわれがこの好機に、大師その人の偉大な人格と、大師の悠久の生命を宿しつつ、千有余年の法灯を掲げ来った巨刹の面影とに親しく触れ得るということは、また大いに意義あることでなければならない。 高野山は別称を野山、また比叡山の北嶺に対して南山ともよび、金剛峯寺の寺号は金剛峰楼閣一切瑜伽瑜祇経にちなむという。 主催 産業経済新聞社 | ||||
※目録の指定や名称は一部現在と異なっています。 |
員数 | ||||
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重文 | 狩場明神像 | 一幅 | 金剛峯寺 | |
重文 | 丹生明神像 | 一幅 | 金剛峯寺 | |
重文 | 大日如来像 | 一幅 | 金剛峯寺 | |
重文 | 花鳥図屏風 | 半双 | 宝亀院 | |
重文 | 勤操大徳像 | 一幅 | 普門院 | |
重文 | 八字文殊菩薩 | 一幅 | 宝寿院 | |
重文 | 当麻曼荼羅縁図 | 一幅 | 清浄心院 | |
重文 | 阿弥陀如来像 | 一幅 | 成福院 | |
重文 | 弘法大師行状絵巻 | 一幅 | 地蔵院 | |
重文 | 商山四皓図屏風 | 半双 | 遍照光院 | |
重文 | 不動明王像(赤不動) | 一幅 | 明王院 | |
重美 | 浅井長政像 | 一幅 | 持明院 | |
重美 | 浅井長政夫人像 | 一幅 | 持明院 | |
重美 | 浅井久政像 | 一幅 | 持明院 | |
重文 | 龍猛菩薩立像 | 一躯 | 泰雲院 | |
重文 | 屏風本尊 | 六面 | 竜光院 | |
重文 | 銅造阿弥陀如来及両脇侍立像 | 三躯 | 不動院 | |
重文 | 薬師如来坐像 | 一躯 | 五大院 | |
重文 | 不動明王立像 | 一躯 | 南院 | |
重文 | 太刀(銘国広) | 一口 | 金剛峯寺 | |
重文 | 短刀(銘国光) | 一口 | 金剛峯寺 | |
重文 | 剣(銘真守) | 一口 | 金剛峯寺 | |
重文 | 蓮華文蒔絵経箱 | 二重 | 金剛峯寺 | |
重文 | 宝篋印塔 | 一基 | 金剛峯寺 | |
重文 | 柄香炉 | 一柄 | 竜光院 | |
重文 | 厨子入倶利伽羅龍剣 | 一口 | 竜光院 | |
金銅宝塔鈴 | 一個 | 普門院 | ||
重文 | 刀(銘繁慶) | 二口 | 金剛三昧院 | |
重文 | 剣(銘国広) | 一口 | 蓮華定院 | |
重文 | 銅磬 | 一面 | 蓮花院 | |
国宝 | 宝簡集 | 四巻 | 金剛峯寺 | |
重文 | 金剛峯寺根本縁起 | 一巻 | 金剛峯寺 | |
重文 | 高麗版一切経 | 三巻 | 金剛峯寺 | |
重文 | 聾瞽指帰 | 一巻 | 金剛峯寺 | |
国宝 | 金銀字一切経 | 二巻 | 金剛峯寺 | |
重文 | 雑阿含経 | 一巻 | 金剛峯寺 | |
重文 | 崔子玉座右銘断簡 | 一幅 | 宝亀院 | |
国宝 | 紫紙金字金光明最勝王経 | 一巻 | 竜光院 | |
国宝 | 細字金光明最勝王経 | 二巻 | 竜光院 | |
真言八祖像 | 八幅 | 金剛峯寺 | ||
金剛サッタ像 | 一幅 | 金剛峯寺 | ||
釈迦三尊像 | 三幅 | 宝寿院 | ||
獅子図 | 二幅 | 宝寿院 | ||
観音双龍図 | 三幅 | 宝寿院 | ||
十六羅漢像 | 八幅 | 西南院 | ||
綱引文殊菩薩像 | 一幅 | 親王院 | ||
不動明王像 | 一幅 | 宝亀院 | ||
八相成道図 | 二幅 | 桜池院 | ||
十王之図 | 五幅 | 桜池院 | ||
如意輪観音像 | 一幅 | 三宝院 | ||
釈迦涅槃図 | 一幅 | 遍照尊院 | ||
友松人物図 | 五幅 | 宝城院 | ||
上杉謙信像 | 一幅 | 清浄心院 | ||
立花宗茂像 | 一幅 | 大円院 | ||
北条早雲像 | 一幅 | 高室院 | ||
太閤秀吉像 | 一幅 | 蓮華定院 | ||
両界曼荼羅図 | 二幅 | 円通寺 | ||
十二天 | 三幅 | 霊宝館 | ||
五大力尊 | 一幅 | 成福院 | ||
薬師十二神将像 | 一幅 | 桜池院 |