第19回大宝蔵展−「顕教の仏たち」 展示リスト

平成10年7月18日〜8月31日

展覧会記録へもどる
 ごあいさつ
 本年四月十五日に金剛峯寺大門の金剛力士像二躯が県指定文化財に、五月十五日には高野山霊宝館本館が登録文化財の指定を受けました。これを記念してこのたび本館では第十九回高野山大宝蔵展「顕教の仏たち」を開催することになりました。
 「顕教」とは文字通りの意味で、あらわに説かれた教として解りやすい仏教の意であり、それに対して「密教」は秘密に説かれた表面からは知ることのできない教であるとされます。この顕教と密教の区分は弘法大師の著述である「秘密曼荼羅十住心論」の中で、人の心の状態を次の十段階に分けて考察されています。
 第一 異生羝羊心、第二 愚童持斉心、第三 嬰童無畏心、第四 唯蘊無我心、第五 抜業因種心、第六 他緑大乗心、第七 覚心不生心、第 八一道無為心、第九 極無自性心、第十 秘密荘厳心、
 この十段階のうち第一より第九までを顕教、第十/秘密荘厳心を密教とする「顕九一密」と、前の九つも深い意味より密教であるとする「九顕十密」の二つの立場があり、本質的には異なるものではないとされています。さらに祖師は「弁顕密二教諭」を著し立宗の宣言書とされました。
 顕教の仏に代表される釈迦如来を中心として仏伝、その生涯を人相として描かれたもの、また、歴史的釈迦は過去世にあらわれた六仏についで、さらに未来に出現する未来仏として弥勒仏が考えられ、これより発展して過去(荘厳劫)、現在(賢劫)、未来(星宿劫)に各千仏が存在するという三世三千仏が考えられました。
 これからもっと具体的な性格をもつ如来として、経典の教主としてその数が増していくことになりました。彼岸の憧憬としての弥陀如来は西方極楽浄土の主尊として臨終の人々を迎えて浄土に往生させ、浄瑠璃浄土の薬師如来は現世利益の仏として衆生の病苦を救い、如来の住する荘蕨な浄土(仏国土)は顕教における美術的表現の中心をなすものとなりました。
菩薩は仏道を修行して如来に到達する過程にあり、如来の両脇侍として阿弥陀如来には観音.勢至菩薩、釈迦如来の普賢・文殊菩薩、薬師如来の日光・月光菩薩のように両脇に侍して如来の性格の一端をあらわし、後にさまざまな菩薩として独立した信仰をもたれるようになりました。浄土図には菩薩の他にも仏教以外の諸神が描かれ、仏法を守護する護法神として四天王、八部衆、十二神将、十六善神などがあります。
 この特別展に祖師大師御請来の国宝諸尊仏龕あ(枕本尊)をはじめ、釈迦加来の生涯を描いた絵画、彫刻、その教え(経典)など一堂に展示を致します。
 御登山された多くの方々に御清覧をいただき、密教美術の宝庫高野山に数多の顕教の仏たちが保存されている信仰の実態、歳月の積み重ねられた古色の味わい、美しさなど拝観された人々に感動が広がりますれは幸に存じます。
平成十年七月十八日 高野山霊宝館館長 山口耕榮
番号
指定 種別 品質 名称 員数 時代 所有寺院
1
重文 絵画 絹本著色 九品曼荼羅図 一幅 鎌倉時代 清浄心院
2
重文 絵画 絹本著色 阿弥陀浄土曼荼羅図 一幅 平安後期 西禅院
3
未指定 絵画 絹本著色 十王図 十幅 室町時代 成慶院
4
重文 書跡 紙本墨書 細字金光明最勝王経 二巻 奈良時代 金剛峯寺
5
重文 書跡 紙本墨書 註仁王般若経第一 一巻 平安前期 竜光院
6
国宝 書跡 紙本墨書 大字法華経(明算白点本) 七巻の内 奈良時代 竜光院
7
国宝 書跡 紙本墨書 不空羂索神変真言経第一・三十 十八巻の内 奈良時代 三宝院
8
国宝 絵画 絹本著色 伝船中湧現観音菩薩像 一幅 平安後期 竜光院
9
重文 絵画 絹本著色 文殊菩薩像 一幀 鎌倉時代 宝寿院
10
県指定 絵画 絹本著色 騎獅文殊菩薩像 一幅 室町時代 桜池院
11
未指定 絵画 絹本著色 五髻文殊菩薩像 一幅 南北朝時代 清浄心院
12
国宝 彫刻 木造 諸尊仏龕 一基 中国唐時代 金剛峯寺
13
重文 彫刻 木造 文殊菩薩及使者像 一基 鎌倉時代 遍明院
14
重文 絵画 絹本著色 地蔵菩薩像(祐円筆) 一幅 南北朝時代 宝寿院
15
未指定 絵画 絹本著色 地蔵菩薩像 一幅 室町時代 成慶院
16
重文 彫刻 木造 薬師如来坐像 一躯 平安後期 五大院
17
重文 彫刻 木造 薬師如来坐像 一躯 平安後期 高室院
18
未指定 絵画 絹本著色 阿弥陀三尊来迎図 一幅 南北朝時代 金剛峯寺
19
未指定 絵画 板本著色 板絵二十五菩薩来迎図 二面 南北朝時代 西南院
20
未指定 絵画 絹本著色 楊柳観音菩薩像 一幅 高麗時代 宝寿院
21
未指定 絵画 絹本著色 地蔵曼荼羅図 一幅 鎌倉時代 宝城院
22
未指定 絵画 絹本著色 地蔵曼荼羅図 一幅 高麗時代 宝寿院
23
未指定 絵画 絹本著色 山越阿弥陀像 一幅 南北朝時代 西禅院
24
重文 絵画 絹本著色 阿弥陀如来像 一幅 南宋時代 成福院
25
未指定 絵画 絹本著色 阿弥陀二十五菩薩来迎図 一幅 室町時代 金剛峯寺
26
未指定 絵画 絹本著色 阿弥陀二十五菩薩来迎図 一幅 南北朝時代 清浄心院
27
未指定 絵画 絹本著色 薬師三尊像 一幅 室町時代 宝寿院
28
未指定 絵画 絹本著色 薬師十二神将像 一幅 室町時代 光台院
29
重文 絵画 絹本著色 薬師十二神将像 一幀 鎌倉初期 桜池院
30
未指定 絵画 絹本著色 十二神像
(宮毘羅・伐折羅・招杜羅・毘羯羅)
十二幅の内四幅 中国明〜清時代 宝寿院
31
国宝 絵画 絹本著色 阿弥陀三尊像 一幅 鎌倉初期 蓮華三昧院
32
未指定 絵画 絹本著色 釈迦涅槃図 一幅 南北朝時代 西禅院
33
未指定 絵画 絹本著色 般若十六善神像 一幅 室町時代 光明院
34
未指定 絵画 絹本著色 般若十六善神像 一幅 江戸時代 金剛峯寺
35
未指定 絵画 絹本著色 般若十六善神像 一幅 江戸時代 西門院
36
重文 絵画 絹本著色 伝薬師如来像(伝張 思恭筆) 一幅 南宋時代 金剛峯寺
37
未指定 絵画 絹本著色 伝・釈迦如来八大菩薩像(伝・張 思恭筆) 一幅 南宋時代 金剛峯寺
38
未指定 絵画 絹本著色 般若菩薩像 一幅 江戸時代 西禅院
39
未指定 絵画 絹本著色 釈迦誕生図 一幅 鎌倉前期 金剛峯寺
40
未指定 絵画 絹本著色 一心十界図 一幅 室町時代 遍照光院
41
重文 書跡 紺紙金字 法華一品経 序品 二十八巻の内一巻 平安後期 金剛峯寺
42
重文 書跡 紙本墨書 増壱阿含経三十二 一巻 奈良時代 金剛峯寺
43
重文 書跡 紙本墨書 往生瑞応伝 一帖 平安後期 宝寿院
44
重文 書跡 紙本墨書 日本法花験記上 一帖 平安後期 宝寿院
45
重文 書跡 紙本墨書 決定往生集 本末 二帖 平安後期 宝寿院
46
国宝 書跡 紙本墨書 細字金光明最勝王経 二巻 平安前期 竜光院
47
国宝 書跡 紫紙金字 紫紙金字金光明最勝王経 十巻の内一巻 奈良時代 竜光院
48
重文 書跡 紙本墨書 放光般若波羅蜜経巻第九 一巻 奈良時代 竜光院
49
重文 書跡 紺紙金泥 紺紙金泥般若心経(霊元天皇宸翰) 一巻 江戸時代 金剛峯寺
50
重文 彫刻 木造 阿弥陀如来坐像 一躯 平安後期 金剛峯寺
51
未指定 絵画 絹本著色 弥勒菩薩像 一幅 江戸時代 持明院
52
未指定 絵画 絹本著色 弥勒菩薩像 一幅 江戸時代 宝寿院
53
未指定 彫刻 木造 阿弥陀如来坐像 一躯 平安後期 金剛峯寺
54
重文 彫刻 銅製 鋳出銅板三尊仏像 一面 白鳳時代 金剛峯寺
55
重文 彫刻 木造 釈迦如来及諸尊像(枕本尊) 一基 中国唐時代 普門院
56
重文 彫刻 金銅製 阿弥陀如来及両脇侍立像 三躯 鎌倉時代 不動院

展覧会記録へもどる