御 挨 拶 このたび第十二回高野山大宝蔵展として、「曼荼羅と星」をテーマに開催することになった。 古代インドでバラモン(僧侶階級)が学修した五種類の学問は五明といわれ、それは声明・工巧明・医方明・因明・内明である。宇宙思想、天文暦学等は工巧明で学修された。すなわち壮大な天空の無数にある星に美意識と信仰に深いかかわりをもってさまざまな神を見出した。 仏教、密教では星宿、宿曜の名で呼ばれ、古く中国に伝わり、科学的によりどちらかというと陰陽道と交り合って、すべての事象は宿曜に反影して占星、吉凶などにあらわれ、星の運行によって運命も予知せられるとされた。仏教に伴ってわが国に入り、平安中期以降広く行われた。唐の不空訳の宿曜経二巻は七曜、十二宮、二十八宿の関係によって一生の運命を卜知して日々の吉凶を知る法を説いた経典であり、その他に一行撰の宿曜儀軌等十数部の経軌がある。 これらの宿曜は神の住所又は神自体とされ胎蔵現図曼荼羅最外院及び北斗曼荼羅に、二十八宿は菩薩形として、十二宮、九曜は人や動物として図化され、星供、北斗供などの修法が行われている。 この特別展は未紹介の資料も多数陳列に加え、星にゆかりの品々を一堂に集めて展観するもので、曼荼羅と星の事象との探いかかわりに注目してその背景にある宇宙天体の信仰も伴せて会得して頂こうという意図にもとづくものである。 御登山された多くの方々に御清覧をいただき御理解を深められる誘いになれば幸いである。 高野山霊宝館館長 山 口 耕 榮 |
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