第9回大宝蔵展-「孔雀明王像修復完成記念」展示リスト
昭和63年8月1日~8月31日
「第九回高野山大宝蔵展」によせて

「高野山霊宝展」は回を重ねること九度、文化財の宝庫としての高野山の名を高めつつあることはまことに喜ばしい限りであります。同展は文化財を通じ、高野山の歴史・思想・信仰などを紹介してまいりました。
このたび「高野山霊宝展」の伝統を受け絶ぐかたちで、「高野山大宝蔵展」と改名し、高野山の文化財のもつ豊かな内容と幅広い種類や高い文化性をより広く紹介いたします。
本年はとくに新たに霊宝館にその所蔵品を寄託された龍光院・西南院・西室院・釈迦文院・龍泉院・大明王院・巴陵院などの宝物を一堂に展示して仏教と仏教美術に深い御理解をもたれる大方の御清覧を仰ぐことになりました。
とくに龍光院は開祖弘法大師とその跡をついで高野山の開創に粉骨された真然大徳が護持された最古の寺でありまして、多くの国宝と重要文化財によって知られる寺であります。
このたび「高野山霊宝展」の伝統を受け絶ぐかたちで、「高野山大宝蔵展」と改名し、高野山の文化財のもつ豊かな内容と幅広い種類や高い文化性をより広く紹介いたします。
本年はとくに新たに霊宝館にその所蔵品を寄託された龍光院・西南院・西室院・釈迦文院・龍泉院・大明王院・巴陵院などの宝物を一堂に展示して仏教と仏教美術に深い御理解をもたれる大方の御清覧を仰ぐことになりました。
とくに龍光院は開祖弘法大師とその跡をついで高野山の開創に粉骨された真然大徳が護持された最古の寺でありまして、多くの国宝と重要文化財によって知られる寺であります。
その他の寺にも高野山の文化財護持の精神をもって「高野山文化財保存会」の趣旨に賛同下さいまして、霊宝館に協力下さいますことはまことに有り難いことと深く感謝いたします。
「令法久住」・「聖宝保存」の大精神により高野山の文化財が千年万年の未来の子孫に伝えられるようにすることは現代の責務であると信じ、第九回高野山大宝蔵展の御挨拶といたします。
高野山霊宝館長 山本 智教
序言
「第九回高野山大宝蔵展」におけるとくに目立つ点を列記しますと次のようなことです。
第一室の四隅に厳然とひかえる四天王立像四躯は幸いにもまことに保存よく、四躯揃って完好であることは喜ばしい。作者快慶はやさしい仏像の特殊な様式をつくりだした人として知られているが、いかめしい四天王像でも亦注目すべき作風を生み出した人として注意すべきである。このことは第二室正面を飾る類品まれな孔雀明王坐像とともに高野山と因縁深い快慶の作風を知るこよなき資料である。
第一室正面の西南院大日如来坐像・釈迦文院不動明王立像は高野山にふさわしい密教像として夫々に特色をもつ優作である。その他夫々密教の御山として、また浄土教の風靡した山としての夫々の特殊性をもっている。
第二室は主として絵画をもって密教美術をあらわす。
第一室の四隅に厳然とひかえる四天王立像四躯は幸いにもまことに保存よく、四躯揃って完好であることは喜ばしい。作者快慶はやさしい仏像の特殊な様式をつくりだした人として知られているが、いかめしい四天王像でも亦注目すべき作風を生み出した人として注意すべきである。このことは第二室正面を飾る類品まれな孔雀明王坐像とともに高野山と因縁深い快慶の作風を知るこよなき資料である。
第一室正面の西南院大日如来坐像・釈迦文院不動明王立像は高野山にふさわしい密教像として夫々に特色をもつ優作である。その他夫々密教の御山として、また浄土教の風靡した山としての夫々の特殊性をもっている。
第二室は主として絵画をもって密教美術をあらわす。
弘法大師像は高野山と真言密教の開創者として、また日本文化の父としての弘法大師の尊像である。高野山の地主の神、高野の守護神として大師以来尊崇されて釆た丹生・狩場両明神像は高野山としてとくに重要な文化財である。
一字金輪曼荼羅・紅玻璃阿弥陀は密教の尊像である。
伝船中湧現観音像は普通の観音ではなく念怒像のような独特の面貌をもつ感得像であり、伝熊野曼荼羅は神仏混淆の思想の産物として貴重である。弁才天は水墨画の手法によって描かれた仏画である。
第三室の列品はとくに唐代中国の文化財であってシルクロード伝来の美術品として類例が少なく、価値高いものが多い。
金剛峯寺の諸尊仏龕は弘法大師御請来の唐代の名品であり、普門院の諸尊仏龕の伝承は明らかでないが、作品として前者に劣らない傑作である。筆者は世界中に残るこのような類品を欧米の博物館で見てまわり、その大多数について紹介したことがあるが、高野山のこれらの両作品は世界的に見てももっともすぐれた逸品である。とくと御鑑賞下さい。
屏風本尊は、唐代中国の作品で仏菩薩四天王などを屏風に連ねた類例のない珍品である。
第三室の列品はとくに唐代中国の文化財であってシルクロード伝来の美術品として類例が少なく、価値高いものが多い。
金剛峯寺の諸尊仏龕は弘法大師御請来の唐代の名品であり、普門院の諸尊仏龕の伝承は明らかでないが、作品として前者に劣らない傑作である。筆者は世界中に残るこのような類品を欧米の博物館で見てまわり、その大多数について紹介したことがあるが、高野山のこれらの両作品は世界的に見てももっともすぐれた逸品である。とくと御鑑賞下さい。
屏風本尊は、唐代中国の作品で仏菩薩四天王などを屏風に連ねた類例のない珍品である。
浮彫九尊像はこのような中国からの請来品をまねて日本でつくつた古作である。
成身会八葉蒔絵厨子の中身は板彫胎蔵界曼荼羅である。唐代中国でつくられたものである。
板彫両界曼荼羅は二枚の板に胎蔵界金剛界の曼荼羅を薄く彫る現図曼荼羅に近いものである。
板彫両界曼荼羅は二枚の板に胎蔵界金剛界の曼荼羅を薄く彫る現図曼荼羅に近いものである。
以上の木彫六点は唐代の盛期あるいは後期につくられた作品で、これだけ揃っているのは珍しい。
いわばシルクロードから伝わった文化が渦巻いた大唐の産物として極めて貴重である。
龍光院所蔵の書跡類はとくに貴重なものが多い。
龍光院所蔵の書跡類はとくに貴重なものが多い。
中でも紫紙金光明最勝王経十巻と大字法華経そして細字金光明最勝王経はともに国宝である。
その他の写経も多く奈良時代の写経であってこれだけ古写経を集めたことは珍しく、とくと御清鑑下さい。
その他の写経も多く奈良時代の写経であってこれだけ古写経を集めたことは珍しく、とくと御清鑑下さい。