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経絵の美術

第8回大宝蔵展-「経絵の美術」展示リスト

昭和62年8月1日~8月31日

ごあいさつ

平安時代後期、奥州では藤原一族による華巌な平泉文化が花ひらいた。
金色に輝く金色堂は奥州の覇者の象徴として今に伝わる。

京都の都文化に対抗するかのように咲き誇った平泉文化の中でも、特に注目されるのが金銀字一切経である。金銀字一切経は藤原三代の初代清衡が、中尊寺を建立した際に発願奉納したもので、約五、三〇〇巻が作られたと考えられている。この一切経は、中世末期高野山に移され、現在国宝「金銀字一切経」として四、二九六巻が高野山に伝えられている。

深い紺色の和紙に金銀泥で一行交代に書かれた経文、巻頭に付けられた見返絵など八五一年たった今もなお光り輝き、平泉文化の豪華さをしのばせてくれる。

中でも見返絵は釈迦説法図ばかりでなく、当時の庶民生活の様子や経典内容を描いた数々の作品を含んでいる。
また、その絵の筆致には伸び伸びした筆運びがみられ、堅苦しい仏画から絵巻物への脱皮がうかがえ、我が国の文化史をたどるうえで貴重な資料でもある。

今般、国宝金銀字一切経の変化に富んだ見返絵の数々を一堂に集め、一般に初公開することはまことに喜ばしいことであります。

昭和六十二年入月一日 高野山霊霊宝館長 山本智教
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