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仏に関する基礎知識:別尊曼荼羅(べっそんまんだら)
密教においては、現実的な目的を達成するためにさまざまな本尊に向かって加持祈祷(かじきとう)を行いますが、それらは四種法といって、以下のように目的によって大きく4つに分けられます。
- 息災法(そくさいほう)・・・災害・病苦など諸々の災いを除く法
- 増益法(ぞうやくほう)・・・福徳・繁栄など利益を獲得・増幅させる法
- 敬愛法(きょうあいほう)・・・和合・友好などを求めて行う法
- 調伏法(ちょうぶくほう)・・・悪霊や怨敵などを調伏する法
これらの目的のためにどのような本尊を選ぶかは、各尊の持っている性格や経典に説かれる効用をふまえて修法者が決定します。
このような、目的ごとに特定の尊格を本尊として行う修法を別尊法といい、別尊法を行う際に用いられる、個々の尊格を中心として構成された曼荼羅を別尊曼荼羅といいます。両部曼荼羅が密教の宇宙観を表す教科書的なものであるのに対し、別尊曼荼羅は修法で使用される実践的なものです。
原則として、別尊曼荼羅は特定の尊像を中心に配し、周囲にこの尊に関わる尊格を配します。「特定の尊像」には経典に説かれる主要なほとけがほとんど含まれるので、別尊曼荼羅は非常に多くの種類があり、それらは以下の7系統に分類されます。
- 如来部別尊曼荼羅
如来を中尊(ちゅうそん)として描かれた曼荼羅で、「釈迦曼荼羅」、「阿弥陀曼荼羅」、「仏眼(ぶつげん)曼荼羅」などがあります。
- 仏頂部(ぶっちょうぶ)別尊曼荼羅
如来は三十二相といって、32の外見的な特徴を持つとされますが、その中でも特に頂髻相(ちょうけいそう・頭頂の肉が盛り上がる)は諸相中でも特に優れた功徳を持つとされ、尊格化されたものが仏頂尊(ぶっちょうそん)です。仏頂部曼荼羅は仏頂尊を中尊とし、「尊勝曼荼羅」、「一字金輪(いちじきんりん)曼荼羅」、「大勝金剛曼荼羅」、「摂一切仏頂(せっいっさいぶっちょう)曼荼羅」などがあります。
- 諸経部別尊曼荼羅
経典や儀軌をもとに描いた曼荼羅で、そのため内容的に複雑な構造を持ち、種類も多く、当麻曼荼羅に代表される浄土経変相図や釈迦八相図等の仏伝図(ぶつでんず)もこれに含まれます。代表例としては大乗経典に基づいた「法華曼荼羅」、「仁王曼荼羅」、「請雨曼荼羅」や密教経典に基づいた「理趣経(りしゅきょう)曼荼羅」、「孔雀経(くじゃくきょう)曼荼羅」、「宝楼閣(ほうろうかく)曼荼羅」などがあります。
- 菩薩部別尊曼荼羅
観音菩薩を除く菩薩を中尊として描いた曼荼羅で、「弥勒曼荼羅」、「八字文殊曼荼羅」、「五大虚空蔵(こくうぞう)曼荼羅」などがあります。
- 観音部別尊曼荼羅
観音菩薩は多種多様に変化するという特徴があり、重要な存在であることから観音菩薩を中尊とする曼荼羅は菩薩部から独立して扱われ、代表例としては「聖観音曼荼羅」、「千手観音曼荼羅」、「七星如意輪(しちせいにょいりん)観音曼荼羅」などがあります。
- 忿怒部曼荼羅
明王尊を中尊として描いた曼荼羅で、「安鎮曼荼羅(中尊は不動明王)」、「愛染曼荼羅」、「大威徳曼荼羅」などがあります。
- 天等部別尊曼荼羅
天部尊を中尊として描いた曼荼羅で、「北斗曼荼羅」、「歓喜天曼荼羅」、「荼吉尼天(だきにてん)曼荼羅」、「十二天曼荼羅」などがあります。
写真左から:仏眼曼荼羅図(宝寿院)、尊勝曼荼羅図(宝寿院)、一字金輪曼荼羅図(遍照光院)、孔雀経曼荼羅図
写真左から:八字文殊曼荼羅図(正智院)、愛染曼荼羅図(金剛峯寺)、十二天曼荼羅図(金剛峯寺)
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